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米軍当局トップが語った太平洋戦争の遺骨収集を巡る日米協力 激戦地の硫黄島に初の合同調査団を派遣、広島原爆で死亡した米兵捕虜にも言及(47NEWS)

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太平洋戦争で死闘を繰り広げた日本と米国が、戦没者の遺骨収集で協力を進めている。厚生労働省が2019年、米国防総省の専門機関「捕虜・行方不明者調査局(DPAA)」と覚書を締結したのがきっかけだ。DPAAはハワイ州の真珠湾に拠点を置き、戦争で捕虜や未帰還となった米兵の消息を追跡している。日本側の遺骨収集は戦後80年を経てもなかなか進まないが、米国はどのように取り組んでいるのか。3月末に来日したDPAAのケリー・マッキーグ長官にインタビューした。(共同通信=野見山剛)
▽「遺骨収集は国の責任」46カ国で活動

 ―DPAAの体制は。

 「民間人と軍人の計725人で、歴史家や科学者らもいる。第2次世界大戦から湾岸戦争までをカバーし、46カ国で活動している」
 ―米国は「全兵士を祖国へ帰す」を合言葉に、遺骨を収集して身元を確認し、遺族に返還する作業を続けている。

 「遺骨の収容は第2次大戦や朝鮮戦争などのたびに取り組んできた。積極的になったのはベトナム戦争後だ。連邦議会で成立した法律により、国防総省に遺骨収集の専門機関を設けるよう定められた。それがDPAAだ」

 ―太平洋戦争で敵対した日米両国が遺骨収集で協力する意義は。

 「遺骨の収容はどの国にとっても人道的に重要だ。国の責任で遺族に返す必要がある。日米の協力は、世界の中でもまれな取り組みだ。和解につながり、同盟国として意識の共有が深まる」
 ―遺骨収集で力を入れている地域は。

 「太平洋諸島だ。日米の戦場になった場所で収容作業を続けていくことが重要になる」
 ―日本への要望は。
「遺骨の出身地域を早く判定できる『安定同位体分析』の活用だ。日本の技術力はとても高い。ただ、日本は安定同位体分析を導入しているエリアを沖縄などの一部に限っている。太平洋島しょ国のパラオやパプアニューギニアなど広く対象にしてほしい。われわれが手を組んでいる国のうち、日本と韓国は能力が高く、韓国とも協力関係がある」
▽硫黄島に眠ったままの米兵は約100人

 ―1945年2月、米軍が硫黄島(東京都小笠原村)に上陸を開始し、約1カ月間の激戦となった。硫黄島での活動は。

 「米兵の遺骨収容のため、2024年に初めて日米合同の調査団を派遣した。米側が主体となり、日本が協力した。過去の記録との照合や情報交換を進めた。今後、分析を踏まえて発掘場所を決める」
 ―硫黄島の戦いで米兵6821人が死亡した。

 「戦死した米兵の多くは戦いの後、間もなく収容した。個人認識票や制服、歯の記録などを根拠に身元を特定し、基本的に遺族へ返還した。収容したうち身元を特定できなかった49柱は、米ホノルルやフィリピンのマニラにある墓地に埋葬された。未収容は約100人だ」

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太平洋戦争で死闘を繰り広げた日本と米国が、戦没者の遺骨収集で協力を進めている。厚生労働省が2019年、米国防総省の専門機関「捕虜・行方不明者調査局(DPAA)」と覚書を締結したのがきっかけだ。DPAAはハワイ州の真珠湾に拠点を置き、戦争で捕虜や未帰還となった米兵の消息を追跡している。日本側の遺骨収集は戦後80年を経てもなかなか進まないが、米国はどのように取り組んでいるのか。3月末に来日したDPAAのケリー・マッキーグ長官にインタビューした。(共同通信=野見山剛)
▽「遺骨収集は国の責任」46カ国で活動

 ―DPAAの体制は。

 「民間人と軍人の計725人で、歴史家や科学者らもいる。第2次世界大戦から湾岸戦争までをカバーし、46カ国で活動している」
 ―米国は「全兵士を祖国へ帰す」を合言葉に、遺骨を収集して身元を確認し、遺族に返還する作業を続けている。

 「遺骨の収容は第2次大戦や朝鮮戦争などのたびに取り組んできた。積極的になったのはベトナム戦争後だ。連邦議会で成立した法律により、国防総省に遺骨収集の専門機関を設けるよう定められた。それがDPAAだ」

 ―太平洋戦争で敵対した日米両国が遺骨収集で協力する意義は。

 「遺骨の収容はどの国にとっても人道的に重要だ。国の責任で遺族に返す必要がある。日米の協力は、世界の中でもまれな取り組みだ。和解につながり、同盟国として意識の共有が深まる」
 ―遺骨収集で力を入れている地域は。

 「太平洋諸島だ。日米の戦場になった場所で収容作業を続けていくことが重要になる」
 ―日本への要望は。
「遺骨の出身地域を早く判定できる『安定同位体分析』の活用だ。日本の技術力はとても高い。ただ、日本は安定同位体分析を導入しているエリアを沖縄などの一部に限っている。太平洋島しょ国のパラオやパプアニューギニアなど広く対象にしてほしい。われわれが手を組んでいる国のうち、日本と韓国は能力が高く、韓国とも協力関係がある」
▽硫黄島に眠ったままの米兵は約100人

 ―1945年2月、米軍が硫黄島(東京都小笠原村)に上陸を開始し、約1カ月間の激戦となった。硫黄島での活動は。

 「米兵の遺骨収容のため、2024年に初めて日米合同の調査団を派遣した。米側が主体となり、日本が協力した。過去の記録との照合や情報交換を進めた。今後、分析を踏まえて発掘場所を決める」
 ―硫黄島の戦いで米兵6821人が死亡した。

 「戦死した米兵の多くは戦いの後、間もなく収容した。個人認識票や制服、歯の記録などを根拠に身元を特定し、基本的に遺族へ返還した。収容したうち身元を特定できなかった49柱は、米ホノルルやフィリピンのマニラにある墓地に埋葬された。未収容は約100人だ」


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